序章

大規模構造物からマイクロマシンにいたるまで,物体の一部分がど のような力を受けていてどのような変形をしているのかについて知 ることは重要である.その力は,重力のような物体力 かもしれないし,圧力や摩擦力の ような表面力かもしれな い.そして,どんな材料でも力を支える能力には限界があり,その 限界よりも大きい力が加われば本来の機能を果たさなくなるし,ま た,変形が大きくなると歯車や軸受けが接触して回転しなくなった りして,やはり本来の機能を損ねるのである.一方,どんなに素晴 らしい超電導材料を開発しても現実に安定して存在しないようなも のは実用材料としては不向きである.このように,材料の力学的特 性と材料の強さの根源の研究なしには,構造の設計は不可能である.

この講義(固体力学基礎)では,このような研究の基礎となる固体と して振舞う[*]物体の主と して可逆変形の力学問題の扱いについて述べる.



Subsections

Akihiro Nakatani 2001-06-25