剛体の力学では,物体の変形は剛体的に,すなわち,回転と並進の 組合せで記述される.一方,変形体の力学では,物体のゆがみ,すなわちそ れ自身の変形をも扱う.
すでに学んだ材料力学における棒の理論は,変形体の力学の中で最
も洗練されたものであり,質点が軸方向力(軸方向応力と断面積)と
いう量を持っている一次元の点の集合であると考える.また,はり
の理論は,質点が曲げモーメント(断面の最大曲げ応力と断面形状)
とせん断力(断面形状)という量を持っているが,やはり一次元の点
の集合体に対する力学である.ここでいう,一次元というのは,そ
の点の性質が,一次元の座標値(例えば )のみの関数で表され
ることを意味している.
一方,本来は3次元的な広がりをもっている物体を扱うためには3次 元的な扱いが必要である.そして,それをスマートに表現するため には,ベクトル・テンソル解析が用いられる.
外力が大きくなると変形量は,大きくなるが,この外力の大きさが ある値以下では,外力を除くと,変形量は小さくなり元の状態に戻 る.このような変形を弾性変形(elastic deformation)と呼ぶ.もし,ヒステリシス を描いて元の状態に戻る場合には,サイクルを構成するのでエネル ギーの収支が零ではないので,ふつうは,弾性変形とは言わない.
さて,例として,材料力学の最初で学んだ棒の引張変形を考えてみ
よう.ヤング率 kgf/mm
の材料でできた断面積
mm
,棒を
kgfの力で引張るときの伸びは,
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