複素応力関数

前節までは,実変数の重調和関数であるエアリーの応力関数を 用いて,直角座標系あるいは極座標系によって表示される平面問題を 解析してきた.しかしながら,エアリーの応力関数を複素変数の2個の解析関数を用いて 表示すれば,関数論の知識を用いてさらに多くの境界値問題に対する解を 得ることができる. エアリーの応力関数は,2個の複素応力関数 (complex stress function) を用いてグールサの表示 (Goursat's expression)と呼ばれる式で であらわされる.またこのとき,応力成分は, コソロフ・ムスヘリシュビリの表示 (Kolosoff-Muskhelishivili's expression) と呼ばれる式であらわされる. 複素応力関数を用いれば,き裂先端 (crack tip)まわりの 特異応力場 (singular stress field)などの応力分布を知ることができ, これは,破壊力学 (fracture mechanics)の基礎となる知見を与える. 複素応力関数の詳細は,『固体力学応用』で講述される予定であるので ここではこれ以上ふれないことにする.



Akihiro Nakatani 2001-06-25