前節で述べた熱力学的関係式は,
もとはといえばつりあい方程式から導いたものであり,
変形が微小であれば常に成立する関係である.
この関係式を具体的な境界値問題に適用するためには,
物体の内部エネルギ
や自由エネルギ
,熱力学的ポテンシャル
が具体的にどのようなものかを明らかにする必要がある.そして,
は,ひずみテンソル
の関数,
は,
応力テンソル
の関数で表現されていなければならない.
一般的にこれは,厳密には事実上不可能である.
しかしながら,ひずみが小さく,かつ温度変化
(
)
が小さい時には,自由エネルギをこれらのパラメータでべき級数に展開する
ことができる.
すなわち,
ここで,
のとき,
なので,ひずみの1次項は消える.
また,3次以上の高次項は無視できるものとすると,
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(227) |
ここで,
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(228) |
とおくと,結局
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(229) |
を得る.
この式は,温度変化を伴う場合の
線形弾性体の構成式であり,
デュアメル・ノイマンの関係
(Duhamel-Neumann's relation)という.
を考えると,温度変化が無視できる場合の
線形弾性体の構成式
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(230) |
を得る.
商法則により,
は4階のテンソルであり弾性係数テンソル
と呼ばれる.
弾性係数テンソル
は,
個の成分を有するが,
応力テンソル,ひずみテンソルの対称性
から
,
が成り立つので,
,
の
個の成分で表わされる.
さらに,ひずみの二次形式で
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(231) |
の様に与えられるひずみエネルギ密度関数
が存在し,応力が,
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(232) |
与えられる場合には,
であるので,
個の定数によって応力ひずみ関係が規定される.
応力テンソル,ひずみテンソルの指標を
のようにフォークト記号
(Voigt notation)で表わす,すなわち,
とおく.
また,弾性定数も
のようにおくと,
応力ひずみ関係は
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(233) |
の様に表わされる.このように最も異方性が強い場合でも
21個の弾性定数で表わされる.
Akihiro Nakatani
2001-06-25