基準配置で,点Qが点Pの極近傍にあるとし,
点Qの座標を
とおくことにする.
現配置では,点Qは,Q
座標
に運動したとする.
点Pと点Pは本来物体中の同一の点であるから
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(170) |
のように1対1の対応関係にあるので,
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(171) |
となる.
は,
ヤコビ行列(Jacobian matrix)と呼ばれる.
さて,ここで,2点PQの距離を, 2点PQの距離をとすると,
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(172) |
となるので,これらの差をとり,式(4.3)を用いると,
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(173) |
ここで,
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(174) |
とおくと,
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(175) |
となる.上の式の左辺はスカラーであり,, がベクトルであるから,
はテンソルである.
さて,の時には,
を意味するので,変形のものさしとして,を用いることができる.
これをひずみテンソル
(strain tensor)とよぶ.
式(4.2)を用いて書き下すと,
と表すことができる.
さて,以上の議論は,長さの2乗の変化を変形前の座標で表したものである.
この様にして定義されるひずみテンソルのことをとくに
Greenのひずみテンソル
または,Lagrange のひずみテンソル
という.
一方,逆関係
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(177) |
が成り立つとし,式(4.3)のかわりに,
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(178) |
を用いて,
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(179) |
を得る.ここで,
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(180) |
とおくと,
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(181) |
このように,現配置の座標で表した場合のひずみテンソルのことを
Almansi のひずみテンソル
または,Eulerのひずみテンソル
という.
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(182) |
さて,
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(183) |
であるが,変位や変位の勾配が小さい時には,
変位の勾配の2次の項は無視できるので,
Green-Lagrange のひずみと,Almansi-Euler のひずみの区別はなくなる.
すなわち,
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(184) |
このように微小変形理論
(infinitesimal theory)で得られるひずみテンソル,
をCauchy の 微小ひずみテンソル
(Cauchy's strain tensor)
とよび,以後,単にひずみテンソルとよぶことにする.
ここで述べたすべてのひずみテンソルは,
その定義から明かなように対称テンソルであり,
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(185) |
がなりたつ.
具体的に,を用いて書くと,
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(186) |
と表される.
さて,
ひずみテンソルの工学的意味を明かにするために,
まず,軸方向の単軸引張変形を考える.
Figure 4.2:
棒の引張変形
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原点が固定されていて長さの棒が,だけ伸びたとき,
座標の点での変位は,
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(187) |
ゆえに,
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(188) |
一方,材料力学などでひずみを
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(189) |
と定義しているから,
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(190) |
となる.同様に考えて,一般に
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(191) |
と書ける.
次に,高さのブロックが,せん断応力を受けて微小な角度だけ
せん断変形を受ける場合を考える.
Figure 4.3:
ブロックのせん断変形
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(192) |
となる.
一方,材料力学の基礎では,
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(193) |
したがって,
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(194) |
さらに一般的には,
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(195) |
このように,ひずみテンソルのせん断成分は,
角度の変化で表される工学ひずみ
(engineering strain)の半分の値を持つ.
このような工学ひずみを用いてひずみ-変位関係
(strain-displacement relation)を次のようにおく.
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(196) |
工学ひずみにおいても明かに対称性がある.
[例]
変形前に,の稜をもつ直方体が,図のように変形後
平行六面体になった場合を考えて,工学ひずみ-変位関係を導く.
Figure 4.4:
微小直方体の変形
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(197) |
同様にして,
も得られる.
Akihiro Nakatani
2001-06-25