変形

物体が外力の作用を受けたとき,一般にはその物体は位置を移動したり 回転したりするだけでなく形を変える.

Figure 4.1: 物体の運動
\begin{figure}\begin{center}
\epsfile{file=c-1.eps,height=5cm}\end{center}\end{figure}

ある固定した直角座標系を考え,物体\(S\)を考える. 基準配置 (reference configuration) (ここでは外力が作用していない状態とする) において,物体内のある点Pの位置ベクトルを \((a_1, a_2, a_3)\)とする. これは,物質座標 (material coordinates)とよび,いわば,物体の 点につけるラベルのようなものである. 外力の作用により運動 (motion)を受けると別の座標 \((x_1, x_2, x_3)\)に 移動する.この点をP\(^\prime\) とする.これは,空間座標(spatial coordinates)と呼ば れる.この時の物体の状態を現配置 (current configuration)と呼ぶ.もちろん,基準配置では, P\(^\prime\)と同じ座標には,別の点があったかもしれないが,現配置では, その点は別の座標に運動している.この時,点Pから点P\(^\prime\)へのベク トル \(\mbox{\boldmath$u$}\)変位ベクトル (displacement vector)といい,次のように表す.

\begin{displaymath}
u_i=x_i-a_i
\end{displaymath} (169)

あるいは,成分で,\(u_x, u_y, u_z\)と書く.さて,物体内の点P と点Qの2つの点を選んだ時,外力の作用によりそれぞれ点 P\(^\prime\)と点Q\(^\prime\)に移るとすると点Pと点Qの間の距離 が点P\(^\prime\)と点Q\(^\prime\)の間の距離が変わっている場合 物体は変形 (deformation)を受けて いるという.一方,物体内の任意の2点に対して基準配置と現配置 の間で2点間の距離に差がみられないとき,物体は剛体運動 (rigid motion)を受けている と呼び.その中でも,すべての物体中の任意の点において,変位ベ クトルがひとつの同じベクトルで表されるとき,その物体は並進(translation)を受けているという. 任意の剛体運動は,並進と剛体回転 (rigid rotation)によって表される.我々にとって 興味があるのは,変形の場合である.



Akihiro Nakatani 2001-06-25