前節の[III]の問題を考える.軸まわりのねじりモーメントを慣
例にならって"トルク"の頭文字と表すことにする.ねじりが加えられて
いる両端から十分に離れた棒の中央部では,応力状態は,どの断面をとって見
ても同一となる.したがって,この問題は一つの断面のみを考えればよいから
2次元境界値問題として扱える.サンブナンのねじり問題
(St. Venant's torsion problem)という.
棒の断面で変位が0の点(ねじりの中心)を原点にとる.軸方向の単位長さあた
りのねじれ角(比ねじれ角)をとすると,
となる.は, に無関係で,のみの関数であるというこ
とは,いえるから,未知関数を導入して,
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(501) |
すなわち,棒がねじりをうけると平面であった断面が,この関数の形に面外方
向に変形することになる.このような湾曲をゆがみ
(warping)と呼び,
のことをゆがみ関数
(warping function)とよぶ.をひずみ変位関係に代入して,さらに,応力ひずみ関係に代入する
と,
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(502) |
を得る.
一方,をナビアの方程式に代入すると,関数は,次の
微分方程式を満足する平面調和関数であることがわかる.
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(503) |
次に,境界条件を考える.側面では,
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であるから,
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したがって,関数は,境界上で上式を満足する平面調和関数である.一
方,断面に作用するねじりモーメントは,
ここで,は,断面2次極モーメントであり,
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(507) |
である.したがって,ねじりモーメントが与えられたならば,比ねじれ
角は,式(8.14)により決定される.もし,
であるならば,
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となり,材料力学で学んだ中実,中空丸棒のねじり問題の解に一致する.
次に,関数が満足しなければならない側面の境界条件式(8.13)を
書き直すと,
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さらに,以下のコーシー・リーマンの関係を満足する,平面調和関数に
共役な平面調和関数を導入する.
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は,次の関係を満足する.
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境界条件式は,調和関数を用いて次のように書き直せる.
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で積分すれば,
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(513) |
ここで,断面が一つの閉曲線で囲まれている場合(単連結領域)は,定数を0と
おいてよい.
一方,応力成分は,のかわりに,を用いると,
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である.いま,
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なる関数 を導入すれば,
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(516) |
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となる.こののことをねじり応力関数
(torsional stress
function)または,プラントル関数
(Prandtl function)という.
に対する関係
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から,の満足すべきねじりの基礎方程式
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を得る.また,ねじりモーメントは,
となる.結局,サンブナンのねじり問題はポアソン方程式を満足する応力関数
を境界上で0となるように決定する問題に帰着される.
Akihiro Nakatani
2001-06-25