サンブナンの問題

一様断面を有する長さ\(l\)の棒を考える.棒の断面の寸法は,棒の長さに対 して十分に小さいとし,物体力は働かないとする.\(z\)軸を軸方向にとる. 棒の側面では,表面力が働かないとすると,Cauchy の関係式において, \(n_z\)は,0であるから,
    $\displaystyle \sigma_x n_x + \tau_{xy} n_y = 0$  
    $\displaystyle \tau_{xy} n_x + \sigma_{y} n_y = 0$  
    $\displaystyle \tau_{zx} n_x + \tau_{yz} n_y = 0$ (496)

が成り立つ.一方,棒の端面では,\(n_x=n_y=0\)であり,\(n_z = \pm 1\) なので,境界条件は,
\begin{displaymath}
\left.\begin{array}{l}
\tau_{zx}={\stackrel{n}{T}}_x(x, y, l...
...T}}_z(x, y, l)
\end{array}\right\} \qquad {\rm on} \quad z = l
\end{displaymath} (497)


\begin{displaymath}
\left.\begin{array}{l}
\tau_{zx}=-{\stackrel{n}{T}}_x(x, y, ...
...T}}_z(x, y, 0)
\end{array}\right\} \qquad {\rm on} \quad z = 0
\end{displaymath} (498)

となる.一般には,このような端面の表面力は複雑な分布となるが,合力 \(N\)と図心まわりの合モーメント\(M\)に置き換えても,St. Venant の原理 によって,端面から十分離れたところでは,同じ応力,ひずみ,変位が生じる と考えられる.
    $\displaystyle \int_{S}\tau_{zx}(x, y, l) dS = N_x, \int_{S}\tau_{zy}(x, y, l) dS = N_y$  
    $\displaystyle \int_{S}\sigma_{z}(x, y, l) dS = N_z$  
    $\displaystyle \int_{S}y\sigma_{z}(x, y, l) dS = M_x, \int_{S}x\sigma_{z}(x, y, l) dS = -M_y$  
    $\displaystyle \int_{S}[x\tau_{zy}(x, y, l)-y\tau_{zx}(x, y, l)] dS = M_z$ (499)

このように端面に作用する表面力を等価な合力と合モーメントに置き換えた棒 の問題を,サンブナンの問題 (St.Venant's problem)という.

St. Venant の問題は,重ね合わせの原理を用いることにより,

[I] 軸方向の力\(N_x\)による棒の引張圧縮

[II] 端面と平行な面内の\(x, y\)軸まわりの 曲げモーメント \(M_z\) および,\(M_y\) による曲げ

[III] 端面に垂直な面\(z\)軸まわりのねじりモーメント\(M_z\)によるねじり

[IV] 端面内の力 \(N_x\) および,\(N_y\) によるせん断と曲げ

の4種の問題に分解される.

[I], [II] の問題に対する解は,応力の成分のうち0でないものは, \(\sigma_z\)のみであり,材料力学で学んだ通りの結果を与える.次節以降で は,[III]の問題について考える.[IV]の問題については,本講義では省略す ることにする.

Akihiro Nakatani 2001-06-25