微小変形理論においては,ある与えられた境界条件を満足する解は
ただ一つに存在することが証明される.
いま,与えられた境界条件を満足する2組の解が存在するとする.
このとき,変位,応力,ひずみが,それぞれ,
,
,
,および,
,
,
とする.
これらの2つの解はそれぞれ,つりあい方程式を満足するから,
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(365) |
ここで,2つの解の差
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(366) |
を考えると,
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(367) |
となる.
一方,
上での境界条件から,
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(368) |
上での境界条件から,
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(369) |
すなわち,2つの解の差の
をつけた成分は,
弾性体の領域内で物体力の無いつりあい方程式を満足し,
境界上の力学的境界条件が
与えられるところで表面力が0,幾何学的境界条件が与えられるところで
変位が0となっている.
つまり,
をつけた成分に関する
ひずみエネルギ密度関数
を用いて応力成分を書き直せば,
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(370) |
となる.
この最初の式の両辺に
を掛けて領域にわたって積分すれば,
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(371) |
第1項は,境界条件より0となる.また,
を用いると,
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(372) |
さらに,ひずみエネルギは負にならないから,
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(373) |
を得る.さて,この式はひずみエネルギ
が零であることを意味している.
このためには,ひずみの成分が零であることを意味する.結局,
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(374) |
となる.
したがって仮定した(1),(2)の解は同一となる.
このように,微小変形理論では解の唯一性が示される.
これを
キルヒホッフの解の唯一性の定理
(Kirchhoff's uniquness theorem)
という.
Akihiro Nakatani
2001-06-25