熱応力の問題を解析するためには式(9.11)で示されるように,まず弾
性体の温度変化
を求めなければならない.弾性体の温度を
,
基準温度を
とすれば,温度変化
は,
で与
えられるから,温度変化
のかわりに温度
について考えれば
よい.熱伝導論によれば熱の流れに垂直な面を通して,単位面積,単位時間当
りに流れる熱量
は温度勾配
に比例する.すなわち,
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(551) |
ただし,
は面の法線,
は,熱伝導率(thermal conductivity)である.これをフーリエの
法則(Fourier's law)
この法則をもとに弾性体内に貯えられる熱量のつり合いを考えれば,弾性体内
の温度
を支配する熱伝導の基礎方程式は次式となる.
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(552) |
または,
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(553) |
ここで,
は比熱(specific heat),
は密度(density),
は時間,
は物体内の
単位体積,単位時間当りの発熱量
(internal heat generation),
は熱拡散率
(thermal diffusivity)または温度
伝導率(thermometric
conductivity)である.
一方,弾性体と周囲媒体との熱のつり合い条件,すなわち温度の境界条件は,
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(554) |
ただし,
は,境界表面での単位面積,単位時間当りの発熱量
(surface heat generation),
は,熱伝達率(heat transfer coefficient),
は,周囲媒体温度であり,これをニュートンの冷却の法則
Newton's law of cooling)という.
[例] 熱応力問題は仮想体積力
と,仮想
表面力
が作用する等温弾性問題の解に流体圧
を加え合わせればよい.(ここで,3軸方向に一
様な圧縮力が作用する場合を流体圧という.)これをデュアメルの相似定
理(Duhamel's
theorem of analogy)という.
Akihiro Nakatani
2001-06-25