図のような微小な四面体を考える.
ABC の面積を ,
その面の単位法線ベクトル
の成分を
,,とする.
また,,,方向に垂直な面
OBC ,OCA ,
OAB の面積を,,
とすると,
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(125) |
となる.
ところで,ABCの面にはたらく応力ベクトルは,
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(126) |
となる.
一般に,物体には,上で述べた応力ベクトルのように
面を通して作用する力,すなわち,表面力
(surface force) のほかに,
重力,遠心力,電磁気力などのように,質量に比例してはたらく力,
物体力(body force)がある.
ここでは,物体が均質であるとして単位体積当たりの物体力を,
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(127) |
とする.さて, 方向の力のつりあいを考えると,
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(128) |
となる.ここで,高次の項を省略して,
および方向も同様に考えることによって
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(129) |
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(130) |
を得る.
これをコーシーの関係
(Cauchy's relation),
または,コーシーの公式
(Cauchy's formula)という.
これにより,応力がテンソルであることがわかる.
以下では,商法則を用いてが2階のテンソルであることを
示す.
まず,がテンソルか否かわからないので,とりあえず,
指標を有する,個の関数とする.
ベクトルを掛けて(について和をとる)ことによって,
ベクトル
になることが分かっている.
さて,
,はベクトルであるから,
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(131) |
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(132) |
のように変換される.ゆえに,
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(133) |
となる.そして,これが,任意のについて成り立つためには,
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(134) |
が成立しなければ成らない,これは, と
が2階のテンソルの変換法則を満足していることにほかならない.
このように,未知の量にテンソル(ベクトル)を乗じた結果がテンソル(ベクトル)
であることが分かっている場合に,その未知の量はテンソルである.
これを,テンソルの商法則
(quotient rule; quotient law)という.
つまり,
,はともにベクトル
であり,
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(135) |
なる関係が成り立っているから,
商法則によっては2階のテンソルであることがわかる.
考えている量がテンソルであるかどうかは重要な事項である.
構成式は,同一の荷重に対する変形や,
同一の力学条件のもとで壊れたり,壊れなかったりといった違いが
座標のとり方に依存するのはおかしいから,テンソルの変換法則を
満足する量で記述されなければならない.
Akihiro Nakatani
2001-06-25