変形を受けていない時,物体内の分子(原子)配列は熱平衡状態にあ る.このとき,力学的につりあい状態 にある.つまり,物体内部から,どんな体積要素 (volume element)を取り出しても,他の いかなる部分からもこの体積要素にはたらく全ての力の合力は0に 等しい.変形を受ける時,この分子配列は変わり,つりあい状態の 枠から出ようとする.そのために,物体内部には,物体を再びつり あい状態に戻そうとする力が発生する.このような内力 (internal force)を内部応力 (internal stress)と呼ぶ.
内部応力は,物体内の分子間原子間相互作用力によって決まる.弾 性論にとって最も重要な事項は,これらの相互作用力が極めて小さ い作用半径を持っているということであり,実際,無限小の作用半 径を持っていると仮定している.すなわち,近接相互作用のみを考 えている.
さて,今,図の様に,物体内部に微小な面積要素 (surface element)を考え,
この面の単位法線ベクトルを
とする.
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次に,物体に対して直角座標系 をとる時,応力ベクトル
は,
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(117) |
(118) |
(119) |
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のことを 応力(stress)という. は 後で述べるようにこの量はテンソルであるので応力テンソルと呼ぶ. , , , , , は それぞれの座標軸に垂直にはたらくので, 垂直応力 (normal stress) といい, ,,, ,,などとも書かれる.
一方,
,
, ,
,
, などは
それぞれの面内に働き,その面をせん断する作用をするので,
せん断応力(shear stress)といい,
,, ,
,, などと書かれる.
つまり,
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Akihiro Nakatani 2001-06-25