商法則

3つの指標と27個の成分を持つある量$A_{ijk}$について考える． この量が3階のテンソルであるかどうかを知りたいが，まだ，3階の テンソルであるかどうかは明かでないので，混乱を避けるために， $A_{(i, j, k)}$と表しておく．

いま，あるベクトル $\mbox{\boldmath$v$}$を掛けて$i$について和をとって得られる

$$T_{jk} = A_{(i, j, k)}v_i$$ (97)

が，2階のテンソルであることがわかっていたとしよう．すると，

$$T_{jk} = T^\prime_{mn}Q_{mj}Q_{nk}$$ (98)

であり，

$$A_{(i, j, k)}v_i = A^\prime_{(l, m, n)}v^\prime_{l}Q_{mj}Q_{nk}$$ (99)

と表せる．一方，ベクトル $\mbox{\boldmath$v$}$は，

$$v^\prime_l=v_iQ_{li}$$ (100)

と変換されるから，

$$A_{(i, j, k)}v_i = A^\prime_{(l, m, n)}v_iQ_{li}Q_{mj}Q_{nk}$$ (101)

$$(A_{(i, j, k)}-A^\prime_{(l, m, n)}Q_{li}Q_{mj}Q_{nk})v_i=0$$ (102)

$v_i$は，任意であるので，

$$A_{(i, j, k)}=A^\prime_{(l, m, n)}Q_{li}Q_{mj}Q_{nk}$$ (103)

この式は，まさに3階のテンソルの変換法則を満足するものである から，$A_{(i, j, k)}$は，テンソルである． このことから，一般に次のことが言える．

あるテンソルであるかどうかわからない量 $\mbox{\boldmath$A$}$にテンソル $\mbox{\boldmath$B$}$をかけて，縮約を行なった結果，テンソルであることが わかっている量 $\mbox{\boldmath$C$}$が得られたならば， もとの， $\mbox{\boldmath$A$}$は，テンソルである．このことを商法則 (quatient rule)という．